静脈内鎮静法とは
静脈内鎮静法(セデーション)とは、眠ったようなリラックス効果を保ちつつ、応答できるレベルの意識を保つ、点滴で投与する麻酔です。 通常の全身麻酔とは異なり、「意識が保たれる」「術後の回復が早い」「麻酔効果の消失が早い」といった特徴があります。
ウトウトと眠ったような状態であるため、治療中の緊張感や不安感を緩和させるメリットがあり、歯科医院に対して苦手意識がある方に選択される治療法です。
意識が保たれる
完全に意識消失する全身麻酔とは異なり、静脈内鎮静法では声を掛ければ応答できます。
静脈から鎮静薬を投与し、中枢神経の働きを適度に抑制することで、痛みを感じないままうたた寝をしたような状態で治療を受けられます。
自発呼吸が行えますので、全身麻酔(人工呼吸器)で治療した時の副作用である、「声枯れ」「喀痰」「咳」といった症状は生じません。
術後の回復が早い
静脈内鎮静法は点滴注入のため、「抗生剤」「ステロイド(症状に応じて)」の同時注入が可能です。
治療後に処方された内服薬を飲むより、点滴によって直接体内へ取り込まれるため、術後の回復が早い傾向にあります。
麻酔効果の消失が早い
全身麻酔よりも麻酔効果の消失が早いため、入院の必要はなく、日帰りで治療ができます。
治療後1〜2時間は当院で休憩していただく必要がありますが、麻酔効果の消失が確認できれば、車の運転をして帰宅していただくことも可能です。
静脈内鎮静法はこのような患者様におすすめです
歯の治療へ恐怖心がある
痛みに敏感だったり、治療への恐怖心が強い方の中には、無理に治療をすると体調不良を引き起こしてしまう方もいます。
静脈内鎮静法では、うたた寝をしたような状態の中で治療を行いますので、治療中の不安感がなく治療を受けられます。
嘔吐反射が強く出てしまう
治療への緊張感や体質により、口の中を触れられると、「オェッ」とえづいてしまう(嘔吐反射)ことがある方は、静脈内鎮静法がおすすめです。
意識を落とすことなく身体の中枢神経を鈍らせますので、嘔吐反射を抑えながら治療を進められます。
治療中の機械音を聴きたくない
歯の治療が苦手な原因の1つとして、「治療中の機械音が怖い」という方もいらっしゃいます。
聞き馴染みのない高音に恐怖が掻き立てられること、痛みとセットで記憶に染みついてしまっていることが原因として挙げられます。
静脈内鎮静法には、眠ったような体感で治療を受けられるほか、健忘作用もありますので、治療中の記憶が残りにくいです。
心疾患や高血圧など基礎疾患がある
心疾患や高血圧などの基礎疾患がある場合、麻酔を受けられない場合がありますが、静脈内鎮静法は負担も少ないため、安定した血圧・心拍数のまま治療を受けられます。
大きな手術を受けるため治療時間が長くなる場合
静脈内鎮静法では、眠ったような感覚の中で治療を行うため、長い治療時間を感じさせないメリットがあります。
歯周病治療やインプラント治療などを行う場合、治療時間が長くなる傾向にありますが、静脈内鎮静法は気が付いたら処置が終わっているため、治療時間があっという間に感じられるでしょう。
静脈内鎮静法の流れ
SETP1|問診・体調チェック
治療の6時間前までに食事を済ませておきましょう。当日は治療を開始する前に、麻酔科の専門医より体調チェックを行います。何か不安な点があった場合は、お気軽にご相談ください。
STEP2|点滴開始
モニターで心拍数や血圧を常時確認しながら、静脈から鎮静薬を投与していきます。個人差はございますが、多くの患者様は1〜3分ほどかけて徐々に眠たくなってきたような感覚になってきます。
STEP3|治療開始
しっかり麻酔効果が現れているか確認した後、治療を開始します。治療中、患者様は寝ているような感覚ですが、呼びかけにしっかり対応できる意識レベルです。
STEP4|麻酔効果が消失するまで院内で休憩
治療が終了しましたら、麻酔効果が消失するまで院内の休憩室でゆっくりしていただきます。ふらつきや眠気が消失し、血圧や脈拍なども問題ないか、十分に確認していきます。
STEP5|ご帰宅
麻酔効果が消失していることが確認できましたら、ご帰宅となります。
静脈内鎮静法の注意事項・禁忌
自費診療のため費用がかかる
専門性が高く高度な技術を必要とするため、静脈内鎮静法を取り扱える歯科医師は限られています。
そのため自費診療となり、治療内容のほか麻酔代が別途発生するので注意が必要です。
治療後は眠気が生じる場合がある
静脈内鎮静法で治療した場合、麻酔効果が完全に消失するまで「ふらつき」「眠気」が生じる場合があります。
治療直後は院内でしばらくお休みいただきますが、帰宅後も無理をせず、安静にしていただく必要があります。
静脈内鎮静法治療が行えないケース
- 重度の基礎疾患がある場合
- 妊娠している可能性がある方
- 緑内障、小顎症、開口障害の方
- 向精神薬を長期間内服されている方
また、使用する薬剤に対し、禁忌症がある場合も治療を行えない場合があるため、当院では治療前に麻酔の専門家が丁寧に患者様に問診します。
静脈内鎮静法のよくある質問Q&A
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静脈内鎮静法は安全性の高い治療法ですか?
静脈内鎮静法は患者様の意識が保たれた状態で、随時モニターで血圧や脈拍、酸素飽和度や心電図を確認しながら治療します。
治療中は麻酔の専門医が立ち合い、治療が終わるまで患者様の状態をしっかり管理するので、安全性が高い方法です。 -
静脈内鎮静法の料金はいくらですか?
静脈内鎮静法の料金は1時間33,000円となります。治療が長引く場合、30分ごとに11,000円が追加加算されます。
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静脈内鎮静法で治療する場合、食事制限はありますか?
治療6時間前までにお食事を済ませていただき、飲み物は2時間前までと制限させていただいております。
食事制限は、治療中の嘔吐反射による器官の詰まり、戻ってしまった食べ物が肺に詰まって引き起こされる誤嚥性肺炎を防ぐためです。 -
静脈内鎮静法は入院を必要としますか?
静脈内鎮静法は麻酔効果の消失が早い傾向にあるため、基本的に入院は必要としない治療法です。 また、全身麻酔と異なり自発呼吸のまま治療を行うので、意識を失うことなく治療が可能です。そのため、入院を必要とせず、日帰りで手術を行えます。